モグモグタイムの韓国産イチゴは元々日本の品種?

 平昌オリンピック・カーリング女子日本代表が競技中の休憩時間(通称:モグモグタイム)、韓国産イチゴを食べているシーンが一時期話題となりました。同時に、その韓国産イチゴの品種開発のため、日本原産のイチゴが強引に使われていたことも注目されました。日本原産イチゴが、なぜ違法に韓国内で交配品種として扱われたのか。流入の経緯に触れて行きます。

農産品種の国際的規制

 そもそも新品種として改良された農産物を守る権利は、国際法で定められています。1961年、パリで植物新品種の保護に関する国際条約が策定され、各国固有の品種を守る機運が高まりました。締結後は、国際機関の植物新品種保護国際同盟(通称:UPOV)が条約を改正しつつ、農産物の権利保護に努めています。日本は1998年に条約に批准し、韓国も2002年に批准しました。ただし条約批准後でも、すぐに本施行される訳ではありません。国内全ての農産物を権利保護対象とするため、10年間の猶予期間が認められています。つまり韓国は2012年まで、国際条約に批准しながらも、自国産以外の農産物品種を輸入。品種改良ベースとしても、法で罰せられることができませんでした。

 韓国国内では1995年に「種子産業法」が制定されていますが、保護対象植物として指定された植物は少数でした。国際条約加盟後も対象植物を広げる動きは鈍く、イチゴは2012年まで対象外とされ続けたのです。裏を返せば、韓国が指定していない植物は海外原産品種を基に品種改良できる環境が整っていた。と、言うことになります。また、韓国内で日本原産品種の権利を申請するにしても、韓国の種子産業法の定めるところ。当該品種を管理する人を韓国内に選任してから、韓国の国立種子管理所へ申請しなくてはいけません。一度、不法に韓国へ新品種が流失した場合。日本側から品種の権利を訴えても、簡単に手続きが通らないのが現状です。

日本原産品種から開発された韓国イチゴ品種

 現在、韓国内で流通の多くを占める品種が「雪香(ソルヒャン)」、「梅香(メヒャン)」、「錦香(クムヒャン)」の3種類です。日本でも優良な品種として名高い「章姫」を基にして、他の日本原産品種と掛け合わされて創られました。これら韓国イチゴは東南アジアにも輸出され、2012年からの5年で約220億円もの収益をあげる貿易に成長しています。反面、日本のイチゴはJA関連団体の利権問題も相まって、輸出量が非常に少ないのが現状です。日本原産イチゴが海外で販売されることが少ない。故に、韓国イチゴが東南アジア市場を席捲するチャンスがあったとも言えるのです。

 開発された韓国イチゴの特徴として挙げられる点とは。開発ベースとなった日本の章姫と韓国イチゴの3種類、それぞれ特徴を挙げていきます。

章姫

 静岡のイチゴ農家・萩原章弘が1992年1月に開発し、90年代の静岡を代表したイチゴです。ケーキに載せても、素の状態でもおいしく食べられる。味の汎用性を重要視して開発され、糖度が高くなる様に創られました。後継品種の「紅ほっぺ」が登場すると生産数は減りましたが、粒単体での味の良さ、育成が早く栽培しやすいなど。後の新品種開発に影響を与えた品種と言えるでしょう。韓国の農学関係者はこれに注目し、1996年に萩原章弘と接触。ロイヤリティを払うことを条件に、萩原章弘は利用を許諾しました。ですが2000年、韓国イチゴとして日本へ逆輸入されていることが発覚しました。章姫は4年のうちに韓国全土へ広まり、韓国イチゴ業界の研究品種とされてしまったのです。

雪香(ソルヒャン)

 現在韓国で最も生産されているイチゴが、「章姫」と「レッドパール」を交配させた雪香です。実の甘味が強く、育成速度も早く、尚且つ収穫量も多い。2005年に誕生した新品種は瞬く間に韓国全土へ作付けされ、韓国のイチゴ流通市場で9割のシェアを占めるまでになりました。また雪香の登場で、2002年から2012年の間で韓国イチゴの売り上げは2倍近くに跳ね上がっています。ただし章姫の特徴である実の柔らかさを受け継いでおり、実が傷つきやすい欠点があります。そのため生産された雪香は韓国内でほぼ消費され、海外へ輸出される量は多くありません。東南アジア市場などには梅香や錦香など、高級品として開発された品種が海を渡っています。

梅香(メヒャン)

 雪香に先行して開発されたのが、梅香になります。「章姫」と、日持ちする「栃の峰」を掛け合わせて2002年に創られています。栃の峰譲りの粒の大きさと適度な甘味が特徴で、食べやすい品種となりました。ただ病気や虫害に弱く、農家から栽培しにくいと不評も買っていました。梅香の栽培する難点を解決するため、雪香や錦香の開発が急がれたと考えられるでしょう。とは言え、味のバランスが取れた優良品種でもあり、東南アジアでは高級品として販売されています。

錦香(クムヒャン)

 梅香の反省から、栽培しやすい品種として開発されたのが錦香です。栃の峰の後継品種に当たる「とちおとめ」と「章姫」を交配させています。梅香と比較して、病気や虫害の弱さは軽減されました。しかし土壌や温度の管理など、依然として栽培に難ある品種と認識されている様です。錦香も梅香と同じく、東南アジアではブランド品として取り扱われる品種です。

流出した日本原産イチゴ

 日本原産品種の流れを受ける韓国イチゴは2010年代なると、韓国内シェアの過半数を超える状況となりました。では日本原産イチゴは、どのように韓国内へ持ち込まれ栽培されたのでしょうか。

流出ルートが分からない例

 一つは、許可なく苗を持ち帰って不正に栽培した苗が韓国全土へ広がった例です。日本の苗種法では、平成10年以前に新種登録された品種は15年。以後の品種は20年間の育成者権が行使され、権利者の許諾無しに栽培してはいけません。ですが無断で韓国へ持ち込まれた苗が育てられ、不法に日本へ流入した事例はいくつかあります。特に錦香の親品種となった、とちおとめの被害が目立ちました。2001年に東京中央卸売市場で、韓国産とちおとめの輸入記録が残っていた事件。2005年に韓国農水産物流公社が展示会向けに制作したパンフレットで韓国産とちおとめを紹介していた問題など。権利を持つ栃木県が把握していないにも関わらず、韓国でとちおとめが栽培されていたのです。

 韓国で交配された品種が市場へ出回る状況となった今日。韓国でとちおとめが不法栽培される数は少なくなっているでしょう。ですが、日本のとちおとめに関わる人々の利益を侵害しているのは言うまでもありません。

許諾後 韓国のイチゴ研究に利用された例

 さらに酷いのは許諾契約した結果、韓国内のイチゴ研究に利用された例です。すでに韓国イチゴの説明項目で章姫を韓国人へ利用許諾した末、雪香が創られた話を挙げました。雪香もう一つの親品種、レッドパールも同じように許諾を無視されて韓国内へ広まっています。愛媛のイチゴ農家・西田朝美によって1993年11月に生み出されたレッドパール。果肉の中まで赤みが強く、大粒で酸味のバランスが取れた優良品種として栽培する農家は年々増えました。「日本で急速に作付けを増やしているイチゴがある」。韓国の農学研究者だった金重吉(キム・チュンギル)はレッドパールの広がりを聴き、行動に移しました。はるばる海を越え、西田朝美へ強引にレッドパールの苗を譲って欲しいと懇願したのです。最初は断っていた西田朝美ですが、金重吉の執拗な押しかけに根負け。書式で、「栽培は5年間のみで、毎年ロイヤリティを支払うこと」、「金重吉以外の人物へ苗を販売しないこと」を条件に苗を提供しました。

 しかし金重吉は帰国後すぐ、近くに住んでいた農家と共同でレッドパールの栽培を開始。農家間でレッドパールの苗が盛んに共有され、21世紀に入ると日本へ逆輸入される事態に。西田朝美が権利を訴えても、手が付けられない状態となりました。

騙し通す文化が日本原産イチゴを広めた?

 無理強いしても日本原産イチゴを手に入れようと動いた、金重吉などの韓国人農学研究者。彼らを突き動かす原動力は何だったのか。そもそも韓国原産イチゴは酸味がキツく、味が悪いことはイチゴ業界内では有名だったそうです。隣国、日本で質の良いイチゴが続々と誕生し、対抗心を燃やす韓国人研究者は少なからずいたのしょう。

 騙しても、気付かれなければ問題ない。悪しき儒教文化が広く共有されている韓国では、詐欺同然でも摘発されなければ大丈夫という考えが根付いています。朴槿恵元大統領の癒着事件や、大韓航空のお家騒動をニュースで見ていても感じることができるでしょう。一方で汚い手法を使って実績を積んだ人物でも、バレなければ英雄として韓国内で担ぎ上げられます。話がそれましたが、韓国イチゴの開発においても同じ話が言えるのです。

 そのため、日本からレッドパールを持ち込んだ金重吉も、韓国イチゴ界の英雄として崇められています。雪香を生み出すキッカケを作り、韓国のイチゴ産業の発展に貢献したことなど。実績として評価され、韓国内の農家へ向けた講演会なども積極的に行っています。さらに、トマトの栽培方法研究も始めるなど。イチゴで積み重ねた経験を糧に、他の農産物への研究にも手を付け始めているのです。ただ金重吉は過去テレビ報道で、韓国の種子産業法改正を政府へ訴えたことがあると波及しています。身勝手とも取れる発言ですが、日本原産イチゴを持ち込んだ当時の韓国はUPOVの国際条約に批准していません。そのため、苗を無断で分け与えた韓国人の農家を国内法で罰することができないのです。

グレーな農産物が日本ブランドを傷つける

 モグモグタイムが注目され、日本原産イチゴが不法に韓国で栽培されている事実は世間へ明るみとなりました。ただし、日本原産品種が許可なく海外で栽培されている例はイチゴに限りません。過去に小豆、カーネーション、黄桃など。中国で無断に栽培されて問題となっています。韓国と同じく、儒教文化が浸透する中国でも不法に農産物を育成して販売する行為が後を絶ちません。日本の農林水産省も動き出してはいますが、事後的な対策に回らざるを得ないのが現状です。既に、韓国のイチゴ商売が成り立っている以上。日本も同じ土俵に立たなければ、今後の日本産農産物輸出にも悪影響が出かねません。韓国イチゴに海外市場を奪われる前に、日本のイチゴ産業も海外展開を真剣に考えるべきだと感じます。