トランプ大統領を支えたロシア・プーチン政権の選挙介入

 ロシアゲート事件の追及など。その言動から国内外より非難を浴び続けているアメリカのトランプ大統領。自身が選出された2016年大統領選挙の追及に拍車がかかっており、政権の足元は揺らぎ続けています。他方、アメリア政局を混乱させた疑いがあるプーチン政権は、なぜトランプ陣営を支援したのでしょう。ロシア側からロシアゲートを見ます。

ロシアゲートとアメリカ経済の停滞

 ロシアゲート事件の詳細は「トランプ弾劾とロシアゲート事件をフリン元補佐官側から見る」で解説した通りです。フリン元大統領補佐官などのトランプ陣営は、秘密裏にロシア側と接触。対立するクリントン陣営へのサイバー攻撃など、大統領選挙の公平性を大きく害した疑いが持たれています。対してトランプ陣営は、フリンをはじめとする人物が訴追されるのを防ぐため。FBI長官を電撃解任するなど。司法権力へ圧力を強め、アメリカ全土から反感を買っているのです。ここで、公になれば大きく騒がれる選挙戦略を取ったのはなぜか。疑問が出てきます。アメリカファーストを前面に押し出し選挙戦を展開したトランプ陣営にとって、怒りの声が挙がる様相は予測できたはずなのに。

 ビジネス畑から政治家へ転身したトランプの経歴を踏まえれば、理由を推察できる点はあります。リーマンショック以後、アメリカ経済が大きく停滞している事実は否定できません。賃金格差は広がり、経済は冷え込み、勢いのあった経済大国の姿は過去のものとなりました。実業家トランプにとってアメリカ経済の復活は、大統領へ就任する上での責務だと考えているのです。そのために手段問わず、かつて敵対関係だったロシア。プーチン政権と手を組んででも選挙で勝つ、という発想するのは想像し難くありません。事実、ロシアゲートの捜査が進むにつれ、プーチン政権とのつながりを疑わせる行動や証拠が顕になりつつあります。

ロシア・プーチン政権が絡んだ怪しい動き

 「トランプ弾劾とロシアゲート事件をフリン元補佐官側から見る」では、フリン元補佐官側からロシアゲートの経過を執筆しました。一連のロシアゲートの要因をロシア側の動きに着目して見直すと、選挙戦からの怪しい関係が浮かんできます。

クリントン陣営へのサイバー攻撃

 大統領選挙終了後の2016年12月。アメリカ中央情報局(CIA)はロシア軍参謀情報総局のハッカー集団により。クリントン陣営がサイバー攻撃を受け、公正な選挙を妨害されたと発表しました。これに対しプーチン政権のセルゲイ・ラブロフ外相は、選挙介入を否定するコメントを出しています。既に6月の時点でアメリカ連邦捜査局(FBI)は、ロシアからの選挙介入について波及していました。その際、プーチン政権はドミトリー・ペスコフ報道官を通じて、すぐに関与を否定しています。プーチン大統領自身も10月に「空想神話の問題」と釘を刺し、アメリカを牽制しました。

 その後捜査が進展し、FBIは最悪21州の有権者管理データベースへ。ロシア側からのハッキングがあった可能性があると発表します。トランプ陣営の一員だった人物達も、プーチン政権と共謀した疑いで次々に辞職していきました。さらに、ロシア戦略研究所が主導して、SNS上でフェイクニュースによる情報操作を行ったと報道されます。追及が厳しさを増す状況に、プーチン大統領はロシア人が関与した可能性を認める声明を2017年6月に出しました。加えて、ロシア政府が国家レベルで関与していないとのコメントも同時に出しています。真相解明が進みながらも、早々にプーチン政権はロシアゲートに関わっていない。と、ロシア政府の選挙介入の明確な証拠があがる状況下でも、臆することなく世の中へ言い放ったのです。

トランプ陣営とロシア人との接触

 大統領選挙期間中、トランプ陣営幹部のクシュナー上級顧問はじめ。複数のトランプ陣営関係者が、ロシア人弁護士や外交官などと接触したことが明るみになっています。

 トランプ政権の舵取り役のクシュナー上級顧問は、接触を認めた上で「ロシア政府とは共謀していない」と発言。事件の調査でクシュナーは、ロシア関係者とのやり取りを記した文章を提出するなど。身の潔白を示すため、事情聴取にも進んで対応しています。

 一方でトランプ大統領の息子、ドナルド・トランプ・ジュニアは会談前に行ったアポイントメールのやり取りをSNSで公開しました。その内容は、クリントン陣営に不利となる情報を入手することを条件に会談したことを明確にするものだったのです。これに対してアポイントメールの相手で、ロビイストのロブ・ゴールドストーンもメールを公開。中にはロシア政府との関与を裏付ける情報が記されており、捜査の進展に寄与する結果となりました。

 ロシア政府との関係を否定するクシュナー上級顧問と、間接的ながらロシアとの関係を認めることになったトランプ・ジュニア。同じ陣営、同じ会談に参加した人物の証言が、なぜ割れるのでしょうか。いずれにしても、トランプ政権内でもロシアゲートに向き合う姿勢に温度差があることは否定できません。

フリン元補佐官との密談

 トランプが選挙戦で勝利して間もない2016年度末。当時のロシア駐米大使セルゲイ・キスリャクはトランプ陣営のフリン元補佐官と電話で密談しました。CIAよりロシアからの選挙介入が発表されていた時期に、両者はトランプ政権発足後のこと。オバマ政権から受けている報復措置の撤回について話し合いました。アメリカでは、政府の認可を受けていない個人が、敵国とみなされる国家との無断外交を禁じています。トランプ陣営が政権を担う前に開催されたこの会談。制裁対象となっているロシア政府の外交官との無断接触は、違法と判断されて妥当な行動と言えるのです。その後すぐに密談は発覚し、フリンは大統領補佐官の辞任に追い込まれました。

プーチンのヒラリー・クリントン嫌いも要因か?

 トランプ陣営勝利の裏で、プーチン政権の影があったことがお分かりいただけたと思います。手段を選ばずに選挙戦を展開したトランプ大統領と、振り回されたトランプ陣営の関係者達。この状況を上手く活用して、プーチンは公式には否定しながらも、アメリカ大統領選挙へ介入したのです。しかし、プーチンがなぜ2016年度のアメリカ大統領選挙へテコ入れを図ったのでしょうか。

 大きな要因としては、ヒラリー・クリントンのプーチン政権批判です。第一次オバマ政権下で国務長官を務めたヒラリー・クリントンは、新たな米露関係をリセットして築こうと動きました。ですが軍出身のプーチンは、元アメリカ大統領のファーストレディーがアメリカ政府高官に就くことへ不快感を持っていました。ヒラリー・クリントンがロシアへ訪問した際も、彼女への嫌がらせとも取れる対応をしています。以来、アメリカとロシアの関係はリセットどころか、悪化の一途を辿りました。クリミアの強制併合やシリア・アサド政権への軍事支援など。ロシアが強硬な軍事姿勢を見せる様をヒラリー・クリントンは「1930年代のヒトラーを彷彿させる」と激しく批判。ロシア政府関係者の在外資産凍結措置など、プーチンの機嫌を損ねる制裁を導入するよう促しました。端から嫌っていた相手によって、ロシアの国益を損ねる事態が発生している。積み重なったプーチンの怒りは、2016年アメリカ大統領選挙でクリントン陣営を攻撃する形で現れたのです。

 対してトランプは、プーチンを「長年、ロシアを率いてきた優秀なリーダー」と大統領就任後のインタビューで答えました。加えて、過激派イスラム組織の壊滅など。共闘できる部分もあると発言したのです。プーチン政権の軍事強権体制を容認するとも取れる内容に、アメリカの二大政党からは避難が沸き立ちました。ただでさえ選挙期間中、ロシア政府からの後ろ盾が疑われていた訳です。プーチンを立てる発言は、アメリカ国民の失意を買う原因ともなったでしょう。

 また、過去の行動から見てもプーチンは、自らを肯定する国家元首との蜜月な関係を築いています。代表的な例として、ドイツのシュレーダー元首相が政界から引退してすぐ。彼をロシア政府の息がかかった資源エネルギー企業の経営責任者として迎えています。互いの利害の為なら国家の壁を越えてでも付き合う。似たようなリーダー感を備えているトランプとプーチンは、利害的な考えで馬が合うのかもしれません。

手段を問わない指導者2人が世界を揺るがす

 プーチンは2018年3月に行われたロシア大統領選挙で勝利し、任期を20204年まで伸ばしました。因みに前回の2012年ロシア大統領選挙は、不公正な選挙プロセスを踏んでいたと国際機関から評されています。当選のためには、あらゆる手段を辞さない姿勢はトランプと共通すると言ったところでしょうか。ですが、東西冷戦時代の両大国における国家元首の選出で暗躍が繰り返されている状況は危惧すべき事態です。米露両国の急激な関係変化は、国際社会のパワーバランスに影響を与えかねません。アメリカ大統領選挙の透明性担保の為にも、ロシアゲートの真相解明が待たれるばかりです。

1 個のコメント

  • モラー報告書が公表され、ロシアゲート事件の真相が解明されましたね
    トランプ氏のロシアとの結託も司法妨害も否定されましたが
    あと、トランプ大統領は共和党員から89%(2019年4月の調査)も支持されていますよ
    因みに安倍総理の自民党員からの支持率は55%(2018年9月の総裁選)しかありません

    共和党側の情報源も持たれると良いかと
    日本メディアの情報源になっているCNNなんて、クリントン・ニュース・ネットワークと揶揄されていましたし

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