安定した経済成長率が予測されても不況を恐れる韓国

 今後、韓国の経済成長率が3%前後を保たれた場合、2020年代前半には先進国並みの国民所得水準になると。2018年1月に現代経済研究所が予測を公表し、韓国経済は上向き傾向にあると発表しました。しかし不動産バブルの崩壊予測や、中国人を筆頭に外国人観光客の足が遠のきつつある状況で。今後の経済状況は冷え込むのではとも予測されています。

安定しない経済基盤

 長年、韓国経済は海外からの投資によって成り立ち。韓国の財閥企業も、輸出産業を軸に国内経済を支えてきました。「いつでも韓国は経済破綻の危機? ~財閥形成からヘル朝鮮まで~」で記述している、韓国経済の歩みを簡単に取り上げていくと。政府の結託した財閥企業が中心となり、ベトナム戦争派兵によるアメリカからの支援金から産業が急成長した。漢江の奇跡によって70年代、韓国の経済成長率は10%前後を安定して記録します。一方、アメリカを中心に海外からの借入金で成り立つ経済環境が形成されてしまい。1998年のアジア通貨危機では大打撃を受け、以来いつ経済破綻してもおかしくないと危険視されてきました。

 その主要因と言われているのが、不安定に働く非正規雇用の増加です。アジア通貨危機で破綻寸前に陥った韓国経済に対し、国際通貨基金(IMF)は緊急融資を実施。財閥企業の整理解体も進み、経済成長率も持ち直しました。ですが代償として、韓国は派遣労働制度の導入を余儀なくされます。しかし、アジア通貨危機を乗り切ってからも、海外借入頼みだった韓国企業の財務体制は変わっておらず。非正規雇用の増加は、失業者の増加と相まって容易に予測できました。韓国政府も対策に着手しますが、国内企業の体質改善は叶わず。一時は過半数の労働者が非正規で働く状況となりました。

 経済成長率の安定感に反する雇用情勢の不安定化は、高学歴であれど若者が就職難に陥る。歪な社会を生み出し、まともな就職ができない七放世代の増加を招きました。今日に至っても、以前より予測された国内産業の弱体化は日々進行しつつあります。

韓国経済をけん引するサムスン電子

 雇用の不安定化が将来の経済成長率に影響しかねないにも関わらず。若者の就職難で、自国の人材成長が促されにくい状況に陥っている韓国経済。そんな雇用状況を他所に、輸出産業は成長率著しく。特に今後も需要増加が予測される半導体企業は、成長産業として期待が寄せられています。

 世界で初めて64メガDRAMメモリを開発したサムスン電子は、韓国が世界に誇る成長有望企業として。アメリカや中国の企業と世界シェアを争っています。過去に現代系だったSKハイニックスを含めると。2017年度はPCの主記憶装置に使われるDRAMでは8割弱、需要が急増するNAND型メモリでは45%前後の世界シェア率を占め。前年比2割の成長率を達成した2017年度の半導体市場において、韓国企業の存在は確固たるものとなっています。

 サムスン電子が販売しているスマートフォン。Galaxyの世界シェア率も、アップルに肉薄されながらも1位を保ち。韓国の経済成長を促す象徴となっています。ただ、スマートフォン分野におけるトレンドの移り変わりは早く。Huaweiを筆頭に猛追する中国勢に押され始めているものも事実で。インド国内における2017年度のシェア率で、サムスン電子は中国企業のシャオミに1位の座を明け渡しています。

 さらに、世界全体で半導体の需要増加が今後も予測されるため。サムスン電子は既存工場の増築に加え、中国での新工場建設を発表するなど。シェア率の安定化を狙った設備投資を立て続けに実施しています。他方、競合他社も同様の動きを加速させているため。過剰投資となるリスクも叫ばれているのも事実で。仮に、アジア通貨危機と同等の経済ダメージを受ければ、韓国経済に大きな打撃を与えて。経済破綻を呼び込みかねないと予測する韓国世論も見受けられ、必ずしも楽観視されている話題ではありません。

不動産バブルが弾ける予測

高層マンション立ち並ぶソウル市内

 他社に先駆け設備投資を実行したサムスン電子の動向に、好意的でない韓国国民ですが。それよりも不安視されているのが、不動産バブルの崩壊予測です。朴槿恵政権の頃に実施された住宅融資規制の緩和によって、韓国では都市部を中心にマンション建設ラッシュが起こりました。五輪需要による公共インフラ開発も触発され、建築業の盛り上がりが経済成長率にも反映されます。

 新築物件や公共インフラの改築によって、韓国では消費意欲が沸き立ち始めました。ですが反動により、各家庭における家計資産の急激な上昇は止まらず。新築マンションの価格は高くなり、次第に売れ残る物件が続出する事態に。公共インフラの建設需要も、2017年頃から頭打ち感が漂い始め。建築会社で雇われていた非正規労働者が、大量失業する。危機的予測も散見される様になりました。

 現代経済研究所が2017年に発表したところ、韓国建設業界への受注が1割減るだけで。約26万人もの労働者が路頭に迷い、経済成長を失速させる要因になると警鐘を鳴らしています。加えて、政権交代による方針転換で今後、公共インフラへの投資額が大幅に減少すると予測されているのです。他方、2017年度の韓国における労働人口比で、建設業に従事する率は7%と少なくはありません。建設ブームの下火により失業した人々を救済しなくては、経済成長率の低下も免れません。

中国からの観光客が頼みだが…

 湧き上がった不動産バブルの崩壊予測によって、市井の韓国国民にとっては家計への不安が広まっています。急激に促された内需拡大で懐が豊かになっても、物価の上昇で生活苦となる姿を予測している人々は多く。一定した経済成長率を維持しつつも、国内消費の先行きは芳しくありません。そうなると、経済成長率を安定感を促すには近隣諸国。とりわけ、中国観光客が落とす観光マネーが重要となってきます。しかし、政治的な外交関係の軋轢を発端として。韓国の観光業は、過去に類を見ないほど苦戦を強いられています。

 日本と同じく、韓国でも2015年頃から中国人観光客による爆買いで経済が潤い。ロッテ免税店を筆頭とする外国人向け小売業は収益を伸ばし、韓国の経済成長率を押し上げる原動力となっていました。すでに慰安婦問題や領土問題によって、日韓の関係悪化が鮮明となっていた時期。減少する日本人観光客に代わる顧客獲得のため。韓国の観光業界は、中国人客をターゲットとする戦略へ切り替えを進めていきました。その後の観光業停滞の主要因を挙げるとすれば、この決断が裏目に出たと言って過言ではないでしょう。

 「北朝鮮の水爆実験・核ミサイル開発をアメリカ会談前に確認する」をご一読して頂けるとお分かりになると思いますが、隣国北朝鮮の度重なる核ミサイル実験を背景に受け。韓国軍と在韓アメリカ軍が、ミサイル迎撃システムTHAADを韓国各地に配置する運びとなります。これに反感を抱いたのが、迎撃ミサイルのレーダー圏内に自国領土が含まれる中国でした。北朝鮮の核ミサイル開発には反対する立場でしたが、仮想敵国であるアメリカ助力の下。ミサイル迎撃システムが導入された経緯を含めて、中国は韓国に対する嫌悪感を顕わにします。

 そして中国政府は2017年3月、THAAD配備による報復措置として韓国旅行禁止措置。通称「禁韓令」を制定し、観光を目的とした訪韓を禁じる制裁に乗り出したのです。同年11月には規制が一部緩みましたが、中国客頼みだった観光業は大打撃を受けたのは言うまでもありません。ロッテ免税店の売り上げは、禁韓令発令前だった2017年2月の月売上を比べると、同年6月は約2割、9月には約4割も減少。創業以来、最大の危機に瀕する事態に陥りました。禁韓令の緩和後も、以前からツアーコンダクターの接客が問題視されていたため。リピーターとして再来韓する外国人観光客は少なく。韓国の観光業は今後、大幅な赤字へ転落することが予測されています。

自国を苦しめる外資頼みの経済

 不動産バブルの崩壊予測が煽る生活不安、中国人観光客の激減はこの先、韓国の経済成長率にも影響を及ぼすでしょう。工場増設策に踏み切ったサムスン電子の動きも、韓国経済の成長にとっては博打の印象を受けます。それでも、長い間外貨を回して経済発展を遂げてきた韓国にとっては、他の選択肢は無いのかもしれません。

 雇用の側面では企業向けのAIロボット開発が、アメリカや中国企業を交えて熱を帯び。韓国国内で訪れてみたい観光地として挙げられるのが、日本のUSJという始末です。つまるところ、国として誇れるものが本来少ない韓国は、海外生まれの産業を自国に昇華させなければならない。外資に経済成長率を依存しなくてはならない国家と言っても差し支えないのです。