SK建設が施工したダム決壊により追及される韓国とラオス

 韓国のSK建設が請け負ったダム工事により、ラオスでは甚大な水害被害に見舞われました。韓国内ではダム建設に信頼が置かれているSK建設が、ラオス政府側の意向を汲み取って。安価な施工費で大規模プロジェクトへ挑んだ結果。ずさんな工事体制を生み出し、世界的に問題視される大水害を引き起こしたのです。

韓国ゼネコンの歩みとSK建設

 「いつでも韓国は経済破綻の危機? ~財閥形成からヘル朝鮮まで~」でも触れたように。韓国経済は、政府と癒着関係を築いた財閥企業によって成長を遂げてきました。建設業界も例外ではなく。最大手の現代建設、サムスン物産などは、政府や自らのグループ企業から受注を獲得し、規模を拡大してきました。

 財閥系のゼネコン各社は、朝鮮戦争による軍事需要を糧に国内での基盤を固め。ベトナム戦争を契機に、海外進出への足掛かりを築いてきました。しかし70年代以降、財閥企業間の過当競争を発端とした手抜き工事が横行した末。韓国ゼネコンが施工した建物の崩壊事故が、90年代以降に多発しました。特に海外では、「アジアで建設施工した建物の崩壊で追い詰められる韓国ゼネコン」で挙げた様に。日本の建設会社が引き受けない。施工期間が短く、安価な案件でも、韓国ゼネコンは積極的に請け負い始めたため。アジア各国のインフラ工事に、韓国財閥系の建設企業が関わる機会が増えていきました。

 SK建設は、現代建設やサムスン物産ほど大きくない。韓国でも中堅規模のゼネコンですが、国内3位の財閥であるSKグループを受注基盤として。海外の大規模入札案件を落札していき、化学プラントの施工を軸に実績を積み上げてきました。ただし、SK建設がこれまで関係を深めてきたのは、中国、サウジアラビア、ベトナムなど。SKグループの強みである、石油事業の発展が今後期待できる国家ばかりでした。そのため、被害が発生したラオス政府と十分な信頼関係を築けていなかったことは、容易に推測できます。

 さらに、SK建設が強みとしているのは、化学プラントの施工建築であって。ダム施工の実績は、韓国内で高評価を得るだけに留まっています。海外でのダム施工実績が乏しい建設会社に対して。ラオス政府はなぜ、国家プロジェクトを任せようとしたのでしょう。

水力発電国家を目指す最貧国ラオス

 そもそも、ラオスは東南アジアでも所得水準が高い国ではありません。ASEAN加盟10か国のGDPランキング中、ラオスは9位(169.8億USドル)。首位のインドネシア(10,154.1億USドル)とは60倍近く開きがあります。国連の策定基準でも、ラオスは最貧国に分類され、農業から工業への産業転換も進んでいないため。ランキング2位である隣国タイ(4,553.8億USドル)や中国の資本に市場循環を頼らざるを得ず。大幅な輸入超過によって、国家経済を回そうと青息吐息の状況です。

 一方で、国内には東南アジアを代表する国際河川。メコン川が流れており、古くから流域の稲作に欠かせない豊富な水源には恵まれていました。独裁政権を握るラオス人民革命党は、これに冷戦時代から目を付け。周辺国への電力販売を目的とするダム開発を長年推進してきました。ただ、ラオス政府が短期的な利潤を得る発注ばかり計画し、国際入札案件を通じて都合の良い業者を選んだため。正確な発電量の推計、周辺住民や環境への影響、ダムの適正な配置数など。全く考慮されず、施工業者が選定されていきました。これは入札時期に当たる90年代~00年代、ラオス省庁で腐敗が横行していた点も大きく。国民や生態系を無視したダム建設計画は、次々に立ち上がっていきました。

 特に、国家財政が貧弱なラオスにとって。インフラ開発を低価格で請け負うゼネコン探しは、何よりも優先される要素でした。そのためSK建設は、ラオスが抱える財政的な課題を逆手に取って。入札に参加していた日本企業よりも格安、かつ短期間で仕上げると豪語した末。未曾有の大被害を発生させる、セーピアン・セーナムノイダム建設の覚書を締結したのです。

露呈したSK建設とラオス政府の低い責任意識

①が決壊した補助ダム,②がセーナムノイダム
③がセーピアンダムの位置,④が決壊場所を示す
※Wikipediaより

 化学プラント建設の海外請負を重ねたものの、ダム建設の海外請負が少ないため実績を積み上げたいSK建設。延々と進まない経済情勢を打開するため、予算を抑えたダム開発に国の命運を賭けているラオス政府。抱えている思惑は違えど、双方の狙いが合致した結果。セーピアン・セーナムノイダムの建設は、SK建設と韓国西部発電が主体となって挑むことになりました。入札で競合した各社から手抜き工事が心配される中。韓国企業主導の合弁会社によるプロジェクトが動き始めたのです。

 国際環境組織、国際河川グループから生態系破壊の懸念が指摘されていることを他所に工事は続き。2018年7月には、工程が9割ほど完了する段階に差し掛かろうとしていました。ですが人災の前兆は7月下旬に差し掛かり現れ、瞬く間に決壊へとつながっていきます。20日、発電用に建設した5つの補助ダム(地図中①の位置)の1つが11センチも沈下。警戒を強めますが、22日夕刻には10カ所にも沈下部分が増え、SK建設の担当者は応急策に取ろうと動きます。しかし、補助ダムへと続く道路は豪雨により寸断され、程なく地方当局に避難指示を仰ぐことになりました。主ダム(地図中②,③の位置)の非常門も開放するも、打開策とはなり得ず。23日昼過ぎには、ラオス政府が非難命令を発令する事態となり。23日18時頃、補助ダムから水が溢れ出し、集落を襲ったのです。

 非難命令が出されていたものの、村々に鉄砲水が押し寄せたのが夜間だったため。多くの人々が犠牲になっただけでなく、6,600人近くもの人々が被災生活を余儀なくされました。ラオス政府は7月25日の公式発表で、死者26人、行方不明者131人と公表しましたが。すぐに死者数を11人に下降修正し、被害状況の交錯ぶりを窺わせました。ただ欧米メディアからは、反対意見をねじ伏せ、国策であるダム建設を正当化するための方便だと追求を受け。ラオスの独裁政権は、海外メディアから問い詰められています。

 他方、施工の舵取りを担っていたSK建設も説明に追われ、無責任とも取れる釈明を発表しました。すでに、ダム決壊を察知してから、SK建設の社員だけ全員避難させた事実を強く批判されていましたが。SK建設は会見で、予想以上の豪雨に見舞われた災害であって、責任はラオス政府が負うべきだと。韓国メディアを通じて見解を示したのです。当然、名指しされたラオス当局は、責任逃れは許されないと反論。基準に満たない低水準の建設が事故の原因だったとし、SK建設へ損害賠償を要求する姿勢を示しました。これにSK建設と韓国政府は、災害救援を優先するべきであって。事故原因を追及するのは時期が早いと切り返したのです。

 そのため、韓国政府は災害発生後すぐ大統領令によって災害救援チームを現地に派遣しますが、30人ほどの救援隊しか派遣されず。中国メディアは建前だけで人員を向かわせた、韓国政府のパフォーマンスだと報じて非難を強めています。

追記(2018/10/23)

 その後の調査の進展で、施工主のSK建設が意図的にダム設計を変更したりするなどの不正が判明しました。また、ラオス政府側も事故発生からわずか1ヵ月で行方不明者捜索を打ち切り、明らかに災害規模と合わない死亡者数と行方不明者数を公式見解として発表しました。

※詳細は「ラオスがSK建設と韓国を追究する足元で」にまとめています。

韓国内でも非難されて株価も下落

 韓国を代表する財閥企業がもたらした災害を客観的に考えれば、ラオス政府が示す様に人災の側面が大きく。ダム建設を後押ししたSK建設、韓国政府は、何らかの責任を取らなければならないのは明白です。しかし、SK建設の不謹慎な態度は、海外メディアからの非難を増長させ。SKグループのブランド力に傷を付けかねない事態へ陥っています。

 今回のダム建設事故に対して、韓国ではSK建設の責任を問う声が高まりを見せ。誇大に動向を報じていた韓国主要メディアも、揃って事故の責任を取るべきと世論を扇動します。触発された国民の間でも、ネット上でSKグループの罵詈雑言が飛び交う様相は経済市場へも波及しました。SK建設の株価は7月25日の1日だけで28%も下落。SKグループの株価も前日から5%も下がりました。他国の国家プロジェクトにおける大事故が、SKグループ全体の信用を失墜させているのです。

 加えて、「崔順実ゲートによる財閥弾劾によって停滞する韓国経済」の中でも少し触れた様に。SKグループトップである崔泰源(チェ・テウォン)会長は、朴槿恵元大統領への不正献金疑惑で。再び刑事訴追されかねない状況が続いています。ただでさえ経営層の安定感が欠く時期に、取り返しのつかない人災を起こしたSKグループは今後。深刻なダメージを受けるのは明らかで。韓国経済を支える輸出産業へ与えるダメージは、計り知れない規模となりかねません。

韓国だけでなくラオス政府にも責任がある

 予てから問題視されていた韓国ゼネコンの手抜き工事によって。ラオスでは多くの農村民が被災し、生活難に陥っています。無論、SK建設を筆頭に、ダム建設を先導した韓国政府は言い逃れをせず。然るべき責任を取らなければ、事態は収拾しないでしょう。

 かと言って、受注を依頼したラオス政府に責任は全くないのかという話にはなりません。人民革命党の独裁的なダム建設方針によって。ダム流域の住民は立ち退きを強要され、先祖代々受け継いできた土地を奪われているのです。国の財政状況を打開する犠牲に、国民に過度な資産負担を強いるのは非難されるべき行為です。韓国企業が積み上げてきた負の実績に注目されがちな「人災」ですが。環境負荷を考慮しない計画を推し進めた。ラオス政府の姿勢も、「災害」を呼び込んだ責任があります。死者数の下降修正し、都合の良い情報だけ揃えようとする。ラオスの一党独裁政府こそ、真に責任を追及されるべき体制ではないでしょうか。

4 件のコメント

  • うーん・・・どっちもどっち、っていう意見には賛成です。
    でも、公開されている雨量情報では、どうみても豪雨って言える状況ではありません。
    https://www.accuweather.com/ja/la/attapeu/356930/july-weather/356930?monyr=7/1/2018&view=table

    これは、ジャンルは違えど専門職についている者の1意見ですが、専門家である以上、調査・検証と、十分に余裕を持った設計と、専門家ではない顧客に対する十分な説明は、義務だと思います。
    (まぁ、日本人の感覚としてっていうのもあるでしょうけどw)

    ならば「豪雨なんて間違っても言えない状況でも、決壊する可能性が高いダムを設計し、なんら対策もする予定はない」という説明を十分にしていなかった企業側には、多大な責任があると思います。

    ただし・・・「自分に都合がいい信じたい物を信じる」のは人間のサガの様なので、そういう人間が中枢にいるという状況は、なんとかしなければいけないのでしょう。

    • たそたそさん
      はじめまして、専門的な知見より貴重なご意見を下さりありがとうございます。

      確かに、今年の夏に日本で散発している豪雨と比較すれば、降水量は少ないですね…。
      報道によれば、決壊した仮置きのダムは安全性が不安視される古い工法で造られていた様です。
      それでも、現地で豪雨とは見られない雨量に耐えられない構造だった点は、この災害の根深さを感じさせますね。

      ラオス政府もダムの施工ペースを調整するなど。予算スケールに見合った建設計画に見直すべきでしょう。

  • なぜ、韓国やSKへの批判が、途中からラオス独裁政権への批判に変わっているの?
    工事施工をした業者より、発注した方が悪いという事なの?
    論旨がとっ散らかる文章を読むと、意図的に混乱を誘導する輩が書いたのか、はたまた単に語学が劣る輩の文章なのか。
    このレベルの文章を人様に晒すなんて厚顔無恥である事は否めないですよね。

    • 通りすがりさんへ
      おっしゃることは一理あると思います。

      ですが、SK建設の低コストで請け負う遠因を作ったのは、
      腐敗した官僚文化を生み出したラオス人民革命党の独裁政権。
      引いては、人災を天災だとする韓国企業、
      犠牲者数の公式発表を後から修正にするラオス政府、
      双方のきな臭い姿勢がダム災害を引き起こしたと言えると思います。

      韓国とラオス、双方責任を負うべきと私は考えています。

      以前にも、「通りすがりさん」と名乗る方からご指摘していただいたことがありますね。
      何かしらの愛を感じ、私の文筆力向上のため、ご意見を下さりありがたく感じております。

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