アジアで建設施工した建物の崩壊で追い詰められる韓国ゼネコン

 韓国の大手ゼネコンが施工した大型建造物の崩壊が、アジア各地で多発しています。外貨収入によって経済が支えらえている韓国にとって。海外建設業のダメージは、国家財政への大打撃となりかねません。しかし、安価な請負費用で受注を獲得してきた韓国ゼネコンの体制が、すぐに改革されるとは考えにくく。韓国は重要な収入源の喪失危機に直面しています。

韓国が海外建設業に注力する理由

 リーマンショックや建設資材の高騰で、日本の大手ゼネコンが苦戦を強いされていた2000年代中盤から後半。韓国ゼネコンは長年コネクションのあった東南アジアや中東で、巨大プラントの建設件数を大きく伸ばします。これには、他国企業の多額な建設費用を逆手に取って。安価で、短期間で、無茶な建築構造でも引き受ける。韓国ゼネコン独自の企業風土が、良い形で反映されたのです。人口も資源も少ない韓国にとって、近隣アジア諸国への事業進出は、国家財政を潤すため。是が非でも取り組まなければならない課題なのです。その理由を細かく挙げるとするならば、以下の2点が言えるでしょう。

外貨収入に頼りきりの経済事情

 「いつでも韓国は経済危機? ~財閥形成からヘル朝鮮まで~」でも取り上げている通り、韓国は第二次大戦後。他国からの借入金、及び輸出産業による外貨収入で国家財政を成り立たせてきました。サムスンを筆頭とする巨大財閥の利益が、韓国の経済成長を促してきたのです。建設業の海外進出も同じく。現代建設、サムスン物産、SK建設など。国内で名を轟かせる財閥は、どこもゼネコンを抱えており。インフラが満足に備わっていない東南アジア。世界市場のベンチマークとなる石油産出国が集まる中東。2つの経済文化圏において、巨大インフラ施設を数多く施工してきました。

 韓国ゼネコンにとって東南アジアは、主要先進国より人件費が安く。ベトナム戦争以後、海外における施工実績を積む最良の地として、東南アジア各国のインフラ整備を担ってきたのです。さらに、70年代のオイルショックで国家財政が危機に瀕した際。現代建設が中東のバーレーンで、造船所建設を成功させたことを皮切りに。韓国ゼネコンがトルコやサウジアラビアなどで、大規模公共事業を任させる機会が増加。00年代の国際的な入札競争で勝ち抜く能力の素地を磨きました。

 ですが、インフラ未発達のアジア諸国へ頼り切った経済形成は、アメリカ等からの借入金と相まって。アジア通貨危機で財政破綻しかけた時代以上に、世界経済の影響を受ける。危険視される経済構造を定着させました。他方、アジア各国の省庁では、安く短期間で仕上げてくれる韓国ゼネコンの姿勢に惚れ込み。近づく役人も現れ、次第に安全性に欠く工事が度々実施されるようになります。その結果、完成した建物が崩壊しても、格安受注を止められない状況に韓国ゼネコンは陥っているのです。

財閥グループ企業の海外拠点建設

 安全性を疎かにしてでも、東南アジアや中東の国々に破格の施工費で公共インフラを建設した先に。韓国ゼネコンが睨んでいるのは、所属する財閥グループの海外拠点を構えることです。国家の財務体質上、厳しい国際競争に打ち勝つ生産能力を求め続けられる韓国企業にとって。労働単価が安い東南アジア、工業製品の原料を輸出する中東の石油産出国。これらの地域を抑えることは重要な意味を持っています。

 韓国最大の財閥、サムスングループ傘下のゼネコン。サムスン物産は自社グループに属する、サムスンディスプレイのベトナム工場を2009年から建設を始め。サムスン電子のスマートフォン、Galaxyの生産台数が増えるに連れて工場も増築させていきました。

 サムスン電子が世界トップシェアを争うスマートフォンメーカーとなった陰で。屋台骨となる工場を建設したのは、同じ財閥のサムスン物産であり。サムスングループは、サムスン電子が施設の増強を図る度に、サムスン物産が施工を担う。現地経済の好循環をベトナムで作り上げたのです。つまり、グループ内のゼネコンに工場建設を任せ。東南アジアを韓国経済に組み込む足掛かりにしようと考えている。韓国と東南アジア間、独自の経済圏を実現しようと動いている財閥は少なくないのです。

 この動きを静観視しているのは中東の国々です。リーマンショックによる石油価格暴落をキッカケに。アラブの主要国では、石油産業からの脱却を図るため。バイオマス研究拠点となる石油化学プラントの新設に舵を切ります。しかし、リーマンショックによる不況の煽りで、先進国のゼネコンへの受注獲得が難しかった結果。低コストで短期の施工を謳う韓国ゼネコンが、中東でのプラント建設を一手に引き受ける運びとなりました。

 ですが、10年代に入り依頼したプラントが完成する時期に差し掛かると。アジア各地で、韓国ゼネコンが携わった建築物の崩壊事故が際立ち始め。中東では韓国ゼネコンに対する不信感が芽生え、次第に欧州のゼネコンへ施工を依頼する流れが盛り上がりました。これに、財閥弾劾問題で揺れていた国内の事情も相まって。韓国ゼネコンは00年代後半に入り、中東での全体シェアを急速に落としはじめています。

アジアで代表する高層ビルを建設したが…

サムスン物産を中心に建設された
ドバイのブルジュ・ハリファ

 世界を駆け巡った大不況を糧に韓国ゼネコンは、アジア圏におけるインフラ施工シェアを一気に伸ばしました。そして、生産拠点を構えた国々の経済を韓国市場の枠組みへ取り込むことで。韓国の財閥各社は費用対効果が高い流通網で、自社製品を世界へ展開するビジネスモデルを構築していったのです。また、安価で早く仕上げてくれる韓国ゼネコンは、東南アジアや中東圏において。良くも悪くも、自国の重要なインフラ建設を任せられる。当てにできる建設会社として認識が広がり、次第に国家を代表する建築物の施工を担い始めます。

 世界一の高層ビル、ブルジュ・ハリファ施工の幹事にサムスン物産が選ばれた経緯には。依頼主であるドバイが韓国ゼネコンに対して、信頼を置いていた現れとも言えるでしょう。最上階の建設にもタワークレーンを用いるなど。奇抜かつ、リスクを伴う施工法によって建築されたブルジュ・ハリファの完成に。サムスン物産だけでなく、韓国ゼネコン各社が高揚したと言います。しかし、建設現場で働く職人や出稼ぎ労働者の待遇は凄惨なもので。建設過程における負傷者や死者の人数が曖昧にされているだけでなく。労働者による暴動やボイコット運動が発生するなど。無理な建設計画の歪みが鮮明になった事実は、隠しきれていません。

 さらに、競合ゼネコンが建設することができないと嘆いた。マリーナベイ・サンズの施工も、韓国の双竜建設が担い。難工事とされた曲線状の高層ビル施工を成功させました。以来、韓国ゼネコン各社では、自社の優秀さを示す一種のプロパガンダとして。アジアの巨大建築物の施工事例を互いに誇張し合う風潮が生まれました。ですが、予定工期よりも早期に完成したことで、双竜建設は政府から多額のインセンティブ報酬を受け取っています。そのため双竜建設は、最初から提示工期よりも短い建設期間で建物を完成させる腹積もりで。安全性よりも、利益追求を優先したのではと疑われているのです。実際、マリーナベイ・サンズの一件だけでなく。韓国ゼネコンが携わった大規模工事が予定より短期で終了し、追加報酬を得ている事例は数知れず。マリーナベイ・サンズが倒壊しないか。心配する声が静まらない主要因となっています。

事故多発で激減した施工数

 プラント開発の実績から、アジア各国を代表する巨大ビルの施工を担うまでに存在感が増した韓国ゼネコンですが。追加インセンティブを狙った短期工事によって、安い請負費用で不足した利益分を回収する。経済性優先の施工計画によって建てられた。建物の数々が、国内外問わず崩壊事故を起こしつつあります。

 前出の双竜建設が1997年に建設した。ジャカルタのインドネシア証券取引所では、2018年1月にバルコニーが崩壊し、多くの負傷者を出しました。完成から20年近く経過した建物の一部が崩れたことに。同じく双竜建設が施工したマリーナベイ・サンズへの建築強度不安が助長されたのは、言うまでもありません。加えて、「SK建築が施工したダム決壊により追及される韓国とラオス」で挙げた。ラオスのセーピアン・セーナムノイダム崩壊による大洪水で、多数の現地住民が被災生活を余儀なくされています。施工を担っていたSK建設の無責任な対応にラオス政府は激怒して。国家間の賠償責任問題にまで発展する大事態と化しています。

 度重なる韓国ゼネコンの手抜き工事に、付き合いを深めてきたアジア各国も態度を変えつつあります。韓国・ニューシス通信社が報じた記事によると、韓国ゼネコンの海外受注金額は2010年の716億USドルをピークに減少。アラブの春が落ち着き、石油産出国が原油の流通量を増やしたため。石油価格が下落し、中東からの新規建設案件が減り、ゼネコン各社が苦戦していると伝えています。しかし実際は、韓国ゼネコンに対する信頼が根底から揺らいでいる現れでもあって。何もアジア各国が、石油価格の下落だけで韓国ゼネコンへの建設依頼を回避している訳ではないのです。

安価で、短期で、多くの受注を受ける歪み

 国家の経済成長を促すため。韓国ゼネコンは、リーマンショックによる他国企業の取引数減少を見逃さず。アジアの新興国が要望する。安価で、短期間で、難関な工事の実現するため、無謀な建設計画を打ち立て施工する企業文化を培ってきました。結果、ラオスのダム建設で大事故を引き起こし、国家財政を揺るがしかねない賠償問題へ発展しているのです。ただでさえ急激に受注数を落としている最中、主要受注先だった東南アジアで発生した人災によって。今後、韓国ゼネコンは倒産を含め。規模縮小に踏み切らざるを得なくなっても、何ら不思議ではありません。