被害増すも台風進路予報が不正確な韓国気象庁

 近年、勢力を増して甚大な被害を残して去っていく台風に頭を悩ませているのは日本だけではありません。韓国でも同様に、田畑や農産物の浸水被害や建物の損壊などが大きな社会問題となりつつあります。しかし、韓国気象庁の台風進路予報があまりにも不正確すぎるため、韓国国内では日米の気象予報しか当てにできないと不満が噴出しています。

2019年台風18号(英名:Mitag)の被害

 北太平洋南西地域の海水が気流により上昇して最大風速17m/s以上になった熱帯低気圧を台風と呼びますが、最近はこれまでより海面水温が高まるエルニーニョ現象が往々に発生するため勢力の強い台風が発生しやすくなっています。典型的な地球温暖化の影響としてやり玉に挙げられる強風豪雨災害の発生件数は2010年代に入り、増してひどくなっているのは読者の皆さんも肌身で体感しているでしょう。

 日本と同じように台風の被害を受けてきた韓国でも、2019年10月初旬に上陸した台風18号(英名:Mitag)によって大な被害を受けています。特に慶尚北道や江原道など朝鮮半島東海岸沿いの地域では洪水や地滑りといった自然災害が多発しました。10月4日時点で10人が死亡して4人が行方不明となっており、韓国全土では釜山市や済州島なども含めて4万8,673世帯が停電、1万ヘクタール以上の農地が被害を受けています。2019年に入って韓国に上陸した台風は18号を含めると7個目になり、今回被害が拡大したのは先に上陸した13号(英名:LingLing)と17号(英名:Tapah)の影響も大に受けているといわれています。日本の関東甲信越や東北地方に広範囲かつ甚大な被害をもたらした台風19号(英名:Hagibis)規模の災害ではありませんが、韓国政府も10日に蔚珍特別災害地域宣言を発表して李洛淵(イ・ナギョン)首相も被災現場に駆けつけています。

 台風大国であり、身近の災害報道を優先させがちな日本のメディア各社は隣国の災害を詳しく伝えないことが多く、実際に韓国や他の東アジア諸国の水害や土砂災害の被害状況は日本国内で広く共有される機会は多くありません。もちろん、自国で発生した災害への対処は最優先にしないといけませんが、他の東アジア諸国の被害状況にも目を向ければ同様に台風被害を受けているのです。

常態化する台風災害

 2019年に入り台風18号を筆頭として10月初旬時点で7つの台風が到来している朝鮮半島ですが、以前から台風が複数上陸していたわけではありません。昨年は台風19号(英名:Souilk)と台風25号(英名:Kong-ray)が朝鮮半島に上陸して被害をもたらしましたが、それ以前に上陸したのは2012年の台風16号(英名:Sanba)でした。それまで日本や中国大陸へ逸れていた台風が朝鮮半島方面へ向かう事例が2018年から増えているのです。


2018年台風19号(英名:Souilk)

 朝鮮半島に6年ぶりに上陸した昨年の台風19号(Souilk)は木浦など韓国南部の主要工業都市に直撃しました。Souilkが朝鮮半島を通過した2018年8月24日には韓国全土約8,700の幼稚園や小中学校が休みとなり、約2万3,000戸が停電被害に遭っています。最大瞬間風速62m/sとなった強風と1時間当たり200mm以上の大雨によって済州島の観光産業はダメージを受けました。ただ、比較して中規模台風だったSouilkは移動速度が遅いのろま台風だった点を除けば通常レベルの台風で、忠清南道東部や大田市に進入する頃には大きな災害をもたらすほどの雨風は吹き荒れなかったようです。さしずめ特徴の少ない台風で韓国南西部以外は被害が少なかったSouilkですが、次に襲来する台風への備えを甘くしたともいえます。

2018年台風25号(英名:Kong-ray)

 Souilkによって済州島のインフラがダメージを受けて約1ヶ月半。今度は猛烈な勢力を保ったまま北上する台風25号(Kong-ray)が朝鮮半島に接近して、韓国南東部の釜山市周辺に上陸しました。進行ルートとしては朝鮮半島を縦横断するルートではなかったものの、台風による反時計回りの強風が韓国全土を襲う事態となります。停電は全国で約6万件に達しただけでなく、台風が直撃した釜山市内では街のあちこちで看板が剥がれ、10月6日の朝型には地滑りや強風の影響で損壊する建物も相次ぎました。済州島でも家屋の浸水被害が広がり、停電した世帯も約1,000件にも達しました。また、野外で開催予定だった釜山国際映画祭も室内開催に変更されるなど、Souilkの通過時とは比にならないほど各方面へ影響が出ました。突風浸水被害が多発したKong-rayによる爪痕は、今後も毎年襲来するだろう台風被害の多発を予感させたのです。


 最初に到来したSouilkはのろま台風ではあったものの、沿岸部を除けば韓国全土で被害を被ったわけではありません。ですが、猛烈な勢力を維持して襲来したKong-rayは釜山市や済州島の都市機能をマヒさせ、ソウル首都圏でも死者を出しています。周辺の東アジア諸国と比べて台風上陸が少なかった韓国ですが、地球温暖化の影響も合いまった他人事では済まされなくなっています。

あてにならない韓国気象庁

 台風の脅威をあまり体験せずともSouilkとKong-rayがもたらした被害から、韓国国民は大雨や強風に備えた防災意識を以前より高めているのは至極当然でしょう。しかし、肝心の予報を発表する韓国気象庁の台風進路予報は正確性に欠け、アメリカや日本が発表する進路予報のほうが参考になると韓国世論が問題視しています。

 そもそも、2012年の台風15号(英名:Bolaven)襲来時も韓国気象庁は予想進路をころころと変えています。アメリカ、日本、中国の各気象台がそろって朝鮮半島に台風が来る事前予報を発表したにも関わらず、韓国気象庁は上海方面に逸れる予報を発表しました。するとBolavenが近づくにつれて韓国気象庁の予報は大きく変わっていき、最後は北海道に逸れる可能性を示唆しながら朝鮮半島東側を通過する天気図を公表しています。まるで韓国気象庁の希望進路ともとれる進路予報ですが、2018年10月に韓国へ上陸したKong-rayの進路予報も同じような嘘っぱち情報が発表されました。Kong-rayが上陸する直前の10月2日、アメリカと日本の気象機関は6日~7日ごろに朝鮮半島へ移動する進路予報を公表しました。しかし、韓国気象庁は同じ時期に台湾方向へ進むとした進路予報を発表。結果として釜山市周辺に上陸して甚大な被害を被ったことも相まって、韓国気象庁の進路予報には痛烈な批判が殺到しました。

 実をいうと、韓国気象庁の体たらくな予報精度に韓国政界からも不満の声が出ています。「台風被害を拡大させている一つの要因は、台風の進路と勢力を予測できなかった気象庁の不十分な予報にある」と苦言する政界関係者もおり、「進路予想」ならぬ「希望予想」と揶揄されている韓国気象庁の予報は当の韓国社会ですら受け入れられていません。

韓国の防災体制は大丈夫か?

 でまかせな台風進路予報を繰り返して信用されていない韓国気象庁ですが、地震防災分野でも新たな問題が噴出しています。2018年から3年間で12億ウォン(約1億1,000万円)の費用を投じて開発が進んでいる地震早期警戒システムの精度が、現段階で50%にも満たないことが明らかにされたのです。計画上の開発期間が幾分残されているとはいえ、あまりに低い精度ではないかと韓国世論は開発計画の進捗に厳しい意見を突きつけています。

 台風進路予報にしても、地震早期警戒システムにしても、国民の命を守るために正確な予測精度が求められます。しかし現状、韓国気象庁は自らの責務から逃げていると罵倒されても仕方がないほど不正確な災害予報を連発させています。多額の国家予算で支えられながらも信頼を裏切る予報を続ける韓国気象庁ですが、いずれ時の韓国政府からの信頼すら失う恐れすらあり得るのです。